ワールドカップ 最高の決勝カード

ドイツ0−1スペイン
プジョル(後28分)


W杯は短期決戦とは言え、大会を通して好調を維持する事がいかに難しいか。それを存分に味あわせてくれた試合だった。
大会前ならともかく、1、2試合前の出来でスペインがドイツに勝つとはどれだけの人が思っただろうか。

ドイツは立ち上がりから妙に憶病なプランで進め、スペインは恐らく持たされていたのだろうけど、結果的に数多くボールを触る事で徐々にらしさを増していった。
後半にドイツが反撃態勢に入ったが、そのころにはもう完全にスペインのサッカーになっていた。
今大会でようやく見る事が出来たスペインらしいサッカーだ。


ドイツはいつものオランダのようだった。
間違い無く、今大会で一番破壊力でインパクトを残したチームで、全試合を通して内容と結果を見たら最強チームといって問題ない。
だけど、その勢いをもたらした若さが、プランを僅かに狂わせたのかも知れない。
そして本物のオランダの方が堅実に生き残ってるのがまた皮肉な話だ。



それにしても決勝がオランダ−スペイン。

もしかして、大会前に何の情報も予想も無く「見たいカード」を選ぶとしたら迷い無く挙げるかも知れないカード。
と言うより欧州サッカー派の大半が、単純に見たいカードとして挙げそうなカードかも知れない。


ブラジル・ドイツの予想は外れた。強さで言うと間違ってないと思うけど。思いっきり外れた。
そして万年優勝候補の2チームは徐々にらしさを取り戻してきた。


W杯における欧州サッカー史上最高の決勝カードを全開で楽しみたい。
本当に楽しみだ。

ワールドカップ 時代は変化している


ドイツ4ー0アルゼンチン

ミュラー(前3分)
クローゼ(後23分)
フリードリヒ(後29分)
クローゼ(後44分)



ドイツ優勢の予想ではあったが、いやいやビックリ。
確かに序盤からドイツがゲームを支配していた。しかし何が起こるか解らない今大会の流れとボール。1点差が続いたしもしかして、ってのはあったが、ドイツは戦い方を変えてもドイツだった。

我慢の時間帯もアッサリ我慢してしまうと、人数をかけない攻撃でジワジワと点差を広げる。この攻撃効率が実に見事だった。
とにかく慌てない、だけど前への勢いがあってパスも正確。この試合巧者ぷりは「我々はトーナメントチームだ」と言うクローゼの自信のコメントからもみて取れる。


対するアルゼンチンは時折いい攻撃を見せるものの、フレキシブルに戦術を変えられない、と言うよりも、ない戦術を変えようもなく、ズルズルと終戦に向かって行ってしまった。
何より失点後からあからさまに焦ってしまったのが残念。


今大会で目に付くのは、ほとんどのチームがローリスクの戦いをするだけに、代替策を用意してないこと。
例えば超攻撃的チームが思いっきり守りに入ったり、少し前のオランダのようにパスサッカーからパワープレイに切り換えたり。別のチームの様に戦い方を変えて相手を戸惑わせる場面は殆ど見られなくなった。
加えてロースコア狙いのチームが増えたことで、ひとつの失点で焦り、チームのバランスを崩すチームが増えてしまった。

リスクの少ない戦い方と言うのは一見素晴らしいかも知れないが、プランが噛み合わなかった時にほんの少しづつ状況が悪化すると言うリスクももつ。

勝負事にリスクはあって当たり前。
ゼロには決してなり得ない。
ならば己の戦い方のデメリットをわかった上で、勝負に出られる方が強いんじゃないかな、とも思う。


しかしこのアルゼンチンは更に問題外だったと言えるかも知れない。
自分の活躍した80年代〜90年大会までの戦術にメッシを当てはめただけの戦術。
マラドーナは自分とメッシを重ね合わせて考えたが、その20年の間の守備戦術の進化については何も考えていなかったようだ。
そしてそれ以外には何も、本当に何も考えていなかった事も明らかになった。



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ワールドカップ 流れと慢心の怖さ


ブラジル1−2オランダ
ロビーニョ(前10分)
スナイデル(後8分)
スナイデル(後23分)


サッカーの怖さを存分に味わえる試合だった。
前半のブラジルは本当に強かった。近年最強だった気もする。
見ていて優勝に決まってんだろと思うほどの試合だった。これは大半の人がそうだったんじゃないかと思う。


ところが、隠されていたブラジルの弱さがここで露わになった。
ひとつは慢心。
2点目を取る事が出来なかったのに明らかに油断をしたのが痛かった。
そうこうしてる間に実質オウンゴールで同点に追いつかれる。
何故かこの時点からブラジルは焦り始める。
まだ試合を支配された訳でもなく、逆転された訳でもないのにだ。
2つ目の弱点、予想以上の打たれ弱さの露呈だ。

闘将ドゥンガの率いるチームとは凡そ思えない、逆境や不測の事態への対処の弱さ。
これはフィールドの闘将が居なかった事が痛かったのかも知れない。
それともあまりに強過ぎたがゆえにそう言ったシミュレーションをする機会すら無かったのかもしれない。
いずれにしろ、監督経験の少なさが一気に噴出してしまった感がある。

それは3つ目の弱点、失った流れを引き戻すためのオプションを何一つ持っていなかった事で決定的になった。


オランダと言う国自体は好きだけど、ここまで強いチームがここで終わってしまう事に一抹の寂しさ、勿体なさを感じる。いやほんと勿体ない。
感じるが、やはりこう言う舞台では技術と同じくらいメンタリティが物を言う。
日本が感じさせてくれたものとまったく逆の事をブラジル代表は教えてくれた。


オランダは全くもってチームとしては頼りないが、カイトやスナイデルのように我慢強くチャレンジ出来る選手が居る。これは素直に内容より勝利を追求するここ最近のオランダスタイルが花開いたと考えていい。

このオランダは凄くないが強い。
そしてブラジルは上手くて強いがあまりに脆かった。

日本代表に足りなかったもの

長かったようで短かった南アフリカW杯日本代表が終わった。
多くの選手が「もっとこのチームで試合がしたかった」「ここまでチームワークの良いチームはもう出来ないかも知れない」と言ってた通り、戦術や選手の質に勝る何か、の一端を存分に見せつけてくれたチームだった。
あんなに選手が走って叫んで泣いてるチームなんて初めて観た。素晴らしいチームだった。



結果的にベスト16。それも2002年とは違いアウェー開催でのベスト16。これには非常に価値がある。これは素直に岡田監督に頭を下げたい気持ちだ。
もし仮にもっと良いチームを作ったところでグループリーグを突破できたかどうかは判らないだろうし、選手たちがここまで悔しさを感じたか判らないだろうから。過程はどうあれ、合格ラインと言われる結果を出した事については素直に評価したいなと思う。俺が何様かはさて置いて。


そして何よりも本田がスターになれたのは大きいと思っている。言動だけじゃなく、攻撃的意識、献身性、そしてフィジカルの重要性を身を以て説いてくれた彼がスターになる事は、間違い無く日本の未来に好影響を及ぼす。

みんながカズに憧れてシザースを連発したように、中田に憧れてスルーパスを通したように、俊輔に憧れてFKを練習したように。本田はFKも得点もスルーパスも、クライフターンまでやってしまった。過去のスター達の良い面を継承しつつ何よりも目的意識の大切さを示した。これは素晴らしい事だと思っている。




さて、日本の戦い方に目を移す。
試合内容は若干つまらないと言われがちなサッカーではあったけど、日本の場合、攻撃に重きを置く=守備をおろそかにするとなりがちなのでこれで良いような気がした。やはり守備が全ての礎になるのは今大会の勝ち抜けたチームを観ていても明らかだ。
DFラインは集中力、高さ、スタミナどれをとっても文句のつけようのない出来だった。
失点も結局スナイデルのミドルと疑惑のPKのみ。川島の好守もあったが、しっかりとやられての失点は最後まで観られなかった。



とは言え日本には圧倒的に攻撃力が足りなかった。
仕掛ける事をしなかったパラグアイ戦を咎める声は多いが、攻撃力が無いのにカウンター主体のチーム相手に仕掛ける事は相当なリスクを伴う。
守備に人数をかけてカウンターのリスクを抑えながら、本田が敵だらけの中に入ってしっかりとキープする事をアテにした、攻撃に関しては極めて本田に依存しきった戦い方をするしかなかった。

それでも形が出来ただけ儲けもので、そのキッカケになったあの親善試合イングランド戦は本当にラッキーだった。結局あの試合の問題点を洗い出し、そこに岡田監督のギャンブルを加えて形にしたのが本番だった。

ギャンブルに勝った事。これこそが岡田監督の唯一の功績だ。


自分のここ2年半の采配を完全否定して、ポジション経験の無い選手を軸にして1からチームを作り直すと言う大博打。恐らく最初の狙いは本田のゼロトップだったんだろうけど、松井がサイドとしての役割に終始した事、遠藤・長谷部が守備に追われた事、大久保が連動せずミドルを連発した事、そして結局は本田がCFとして覚醒を始めたため、殆ど普通の1トップだった。曲がりなりにも18個もプロチームがある国が本来取るべき方法ではない。


1ヶ月前に誰が本田がセンターフォワードとして覚醒して、カメルーンデンマーク、オランダ、パラグアイとの4試合中3試合でマンオブザマッチに輝くなんて想像しただろうか。
これはもう完全に本田個人の功績でしかない。これは流石に平山でも前田でも柳沢でも、また本人にもう一度やれと言われても確実じゃないだろう。


これこそが次への課題。
守備は良かったが攻撃は未だ運頼みだと言う事。
時折良いパス回しはあったが、あれを如何に狙って続けられるか。その為に今後は守備ベースを生かして何処まで攻撃にシフト出来るかが課題ではあるが、アンカーを除けて同じ安定感を維持し続けるのは難しいかも知れない。
例えばユーロではスペインの絶対的なアンカーとして存在したセナを排除し、逆に攻撃の安定感まで失ってしまっている。チームと言うのは相対的で実に絶妙なバランスで成り立っているのが良く判る出来事だった。

専門職は古い戦術として世界的に排除傾向にあるが、やはり要所には必要だろうし、役割を全うする事に関しては長けている日本には専門職と言いうのは向いている。
だから全てをモダンにシフトするのではなく、モダンなシステムの何が有効なのかを理解し、日本にあったシステムに落とし込めば良いんじゃないかと思っている。
そういう意味では戦術オタクよりも合理主義な監督が向いているのかも知れない。ヒディンクモウリーニョみたいなのが。


ところで、日本を安定させたのはアンカーシステムだと言うのは間違いないが、パラグアイ戦でアンカーの阿部を交代した後に極端にバランスが崩れたかと言うとそうではなかった。
あのアンカーシステムは後ろは任せられると言う攻撃意識の芽生えのキッカケに過ぎなかったのかも知れない。攻撃に人数を割きつつ守備意識を怠らないなんて真似も出来る可能性はある。
だとすればこれは日本人の技術的問題ではなく意識の問題だ。


守備に追われて攻撃出来ない、ではなく、リスクを感じても攻撃する意識を持つ。これは中田も言ってた事だ。
良く守るのは当たり前、良く守ってその上で攻撃にも転じる。更に言うと守備は守るだけではなく攻撃の起点だと言う事を理解して守る。
岡田ジャパンのコンセプトに、「キープ時間を長くして相手の攻撃機会をへらす」と言うものがあったが、そんな消極的なものではなく、相手に脅威とより多くの得点を生むための攻撃の起点。

オシムが狙っていたのは多分この辺りで、DFラインにパス能力の高い選手を配置していた。
つまりオシムは出来ない事は無い、と踏んでいた訳だ。



日本に何が足りないか。
それは役割だけでなく、サッカー全体に対する意識。攻守の意識、プレッシャーやリスクを負う場面での勝負する意識。
本田が「若い奴は海外に行くべきだ」と言ったのは確かにそう。
長谷部が「Jを観てくれ」と言ったのも同様だろう。

苦境に立ち、批判にさらされ、ギリギリで勝負してはじめて今求められている事以上のものを意識できる。W杯だけでは気付いた時に大会が終わってしまう。そしてまた4年間が流れてしまう。
だからこそ普段からその環境に晒されなくてはいけない。
そこで初めて「良く守れるチーム」から「強いチーム」へ進めるのだと思う。



日本代表W杯データ
ベスト
・総距離:464.52km(2位)
・フリーランニング:203.11km(1位)
・枠内シュート:27本(5位タイ)

ワースト
・パス成功率:60%(最下位)
・シュート数:46本(16強中15位)
・クリア成功率:9%(30位)

日本代表会見

http://southafrica2010.yahoo.co.jp/news/cdetail/201007010010-spnavi

今野のモノマネ、森本の歌

トゥーリオ、実はこれが元ネタです。

何だかんだで仲いいのだと思います。

グループリーグベストイレブンに日本3人!3戦目ベストイレブンには6人!

ヤフーUKのグループリーグベストイレブンに日本人から
本田、中澤、トゥーリオの3人が選ばれている。
本田はパラグアイ戦も公式MOMに選ばれている模様。

http://uk.eurosport.yahoo.com/26062010/58/world-cup-2010-best-xi-group-phase-fab-forlan.html

Goalkeeper
GK: Diego Benaglio (Switzerland) - 7.45

Defenders
RB: Winston Reid (New Zealand) - 7.03
CB: Marcus Tulio (Japan) - 7.08
CB: Yuji Nakazawa (Japan) - 7.25
LB: Nadir Belhadj (Algeria) - 7.18

Midfielders
MF: Gervinho (Ivory Coast) - 7.3
MF: Ji-Sung Park (South Korea) - 7.3
MF: Rafael Marquez (Mexico) - 7

Forwards
FW: Lionel Messi (Argentina) - 7.9
FW: Diego Forlan (Uruguay) - 7.9
FW: Keisuke Honda (Japan) - 7.8


グループリーグ3戦目は
http://uk.eurosport.yahoo.com/26062010/58/world-cup-2010-best-xi-heroes-japan.html
なんと日本から6人!
阿部、長友、中澤、本田、遠藤、松井が選ばれている。

・・・日本評価高すぎて怖い。
まぁ南米系やスター選手があまり選ばれて無い辺り、意外性ってのもあったんでしょうね。
メッシが4点取るよりイグアインが4点取る方がインパクトとしては大きいですしね。

俺達の戦いははじまったばかりだ

あー。

負けたねー。

悔しいねー。


次は4年後。
長いけど、悔しい思いをするほどの勝負が出来た事が大きい。
たらればは言い出せばキリないし、たられば完全適用すれば負け試合だろう。

それよりも、ガチでぶつかって見える世界との差。それを持って各々が所属チームに持ち帰り、また代表への力になる事が大きい。
ユース世代が世界に出るようになって底上げされた。それがW杯ならどうなるか。今後の楽しみではある。パラグアイだってようやく乗り越えたベスト16の壁なんだし。

日本はタフだったし、クレバーだったし上手かった。
何より意識が高くてまとまったいいチームだったと思う。
後少し、固められた相手を崩す戦術がなかった。


PKは仕方ない
「PKを外す事ができるのはPKを蹴る勇気を持つものだけだ」
バッジォもそう言ってたな。


次は4年間、目標もってチームを作り上げて、もっと強い日本をみたい。

日本のワールドカップはようやくはじまった気がする。